2017年02月21日

JR札沼線に対する個人的見解

ここ数ヶ月、JR北海道の動向と自治体の動きが北海道民とりわけJR不採算路線の沿線住民にとって話題になっている。特にJR札沼線(北海道医療大〜新十津川)は全道一の不採算路線。既にバス転換の話も出ている中で、住民が何を求めているのか、何を考えているのかは多くの人の関心事だ。

月形町は上坂町長が「現状維持」を事あるごとに強固に打ちだしていることから、町内での表だった議論は全くない。町長が対外的に方針を示すことはあってもいいが、同時並行で町民への説明と意見聴取(広報広聴)の機会は確保しなければならない。特に、JR側が札沼線沿線3町長(新十津川町、浦臼町、月形町)に(質問への回答書の形で)具体的な方針を示した昨年12月中旬以降に、町民説明会や懇談会を開催すべきだった。JR札沼線沿線の他の自治体(新十津川町、浦臼町、当別町)が開催しているのとは対照的だ。「対話のまちづくり」を掲げて当選した上坂町長、多くの町民が「対話」に期待し「対話」を望んでいる。

それにしても、町も町なら議会も議会だと思う。議会が「JR問題に関して、町から詳細な説明は受けていない」(「町民と議会との懇談会」での議員発言)と平然と言ってのけたことにも驚いた。JR問題は新聞紙上を賑わし、町内での年末年始の挨拶では必ず出てきた話題であったのに、最も情報源に近い議会が何も動いてこなかったとは! そして、そのことに疑問すら持っていなかったとは! とても残念だ。

JR札沼線問題に関して、月形町は町民不在のまま進んでいる。

さて、私はこれまでJR札沼線問題について個人的見解を問われる場面が何度かあった。その都度回答してきたが、ここに整理して記すことにする。

新聞紙上やSNSでは現状維持・存続希望の意見が多くを占めているが、私はそうは思っていない。別の見解、別の視点を示すことで、この地域にとって「何が問題で、どう解決するのか」という議論が活発化することを願っている。
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【JR札沼線に対する個人的見解】

私は、JR札沼線(北海道医療大〜新十津川)はバス転換を受け入れ、条件闘争をする段階にあると考えている。これは私が個人的に情報を集めた中で出した結論だ。

   私はJR札沼線沿線の住民だが、JR札沼線のことだけ、つまり地元の利益だけを考えて結論を出すわけにはいかないと思っている。鉄路は道内や国内をつないでいるのだから、北海道全体の視点で鉄路の行く末を考える必要がある。そう考えると、私の基本的な考えは、道の鉄道ネットワーキングチーム(WT)と近い(→ 報告書はこちら 概要は北海道新聞2月1日朝刊 → 写真は一部を掲載)。

鉄道の本来の機能(遠隔地間を高速で大量に輸送できる)を考えた時、北海道内の主要な都市を結ぶ幹線はたとえ赤字が大きくとも残すべきと考えるが、枝線・末線においては状況に応じて取捨選択する時期に来ていると思う。今ある鉄路を残せるものなら残したい。しかし、JR北海道に限らず、国も道も沿線自治体も財政が厳しいのは自明の理。限りある資金や資源を住民福祉の向上に使うためには、どこかを削りどこかに配分しなければならない。鉄路の必然性がなく、利用者の少ない路線の維持のために、貴重な資金や資源を配分できるほどの余力はもうないと思う。

私たちJR札沼線沿線住民は、すでに現実を受け入れているではないか?

JR札沼線は札幌を発着地として新十津川駅で折り返し運転をするローカル線だが、札幌〜北海道医療大までは電化され毎時2〜4本の電車が往復している。電化区間の乗降客数は道内でも指折りの優良路線で、札幌圏の住民の生活の足として必須の路線になっている。
一方、北海道医療大〜新十津川間はディーゼル機関車による運行で、北海道医療大〜月形までは2時間に1本程度(1日に下り8本、上り7本)、終着の新十津川までは1日1往復しかない。この運行ダイヤになったのはちょうど1年前である。
午前中に1往復しか走らない路線が日常の交通手段として利用できるはずもない。「日常の利用」を路線存続の決め手とするJRにとっては、本格的な議論の1年程前にすでに伏線を張っていたと言える。しかし、私たち沿線住民は大した抵抗もせずに受け入れてしまったのではないか。変更前には各自治体が各町民向けにダイヤ改正の説明をしたのである(月形町でも実施された)。

実際、ほとんどの町民はJRに乗っていない。

JR北海道は各駅毎の利用者数を丁寧に調べていて、JR主催の説明会や各町長への回答書ではそれらの資料が提示された。その数字から受ける印象は、私が利用するときに目にする乗客数(ほとんど乗っていない状況)と変わらなく、信用できるデータだと感じた。
また、主要駅(例えば石狩月形駅)の乗降客数の年次変化のデータもあった。数年来の乗降客数は横ばいなので「なぜ今、バス転換なのか?!」という存続支持派の意見も出てくると思うが、母体となるJR北海道の直近の状況(安全管理不備による事故多発、災害復旧)を勘案すると、切羽詰まった状況が見えてくる。鉄道ロマンの充足よりも、明日の食料をどう調達するのか的な状況になっていると容易に推測できる。

「JRを残してほしい」の真意は?

町民と話しをするとき「JRを残してほしい」と言われることがある。が、よくよく話を聞いてみると「公共交通(=JR)を残してほしい」という意味だと解る。今、実際にJRを利用している人達は自らの移動手段を持たない人で、公共交通がなくなることは死活問題である。だが、公共交通は「鉄道」でなくてもいいのだ。バスであってもタクシーであっても長期間キチンと運行されることが約束され、運賃が程々であれば利用する。計画的に利用できることが重要なのだと思う。「ほとんど人が乗っていないのに、それを残すためにお金を使うなんてもったいない」と普段から利用している人が言う。「日常の暮らし」の視点で考えれば当たり前のことだ。

「月形高校の存続」と「JR札沼線の存続」は連動しない。

月形町内とりわけ町や議会関係者とJRの話をすると、決まって月形高校存続とセットにされる。「JRがあるから月高生が札幌方面からも集まってきて維持できている」と。私にはどうも解せない。生徒本人も保護者も「鉄路」があるから月形高校に通うのか?
札幌方面から月形に通う際には当別駅での乗り換えは必須。電車から汽車に乗り換えるか、電車からバスに乗り換えるか・・・。今、通学に使える朝の便は2本しかない。乗り遅れたらお昼になってしまう。もしバスの運行で3本確保できたら、格段に便利になるだろう。月高に停留所を設ければ、当別で乗り換えるだけで学校まで直行だ。それに、バス運行の柔軟性を考えれば中型バスを導入し、通学時の月高生が分散して乗れるように工夫すればいい。例えば、早い便で通学する生徒には運賃補助を出したり、部活の朝練を推奨したり、受験用の朝授業を設けるのもいい。これまで以上に生徒に寄り添った学校運営につなげることもできる。
これまで「月高の存続」と「JRの存続」をセットにしてきたことで思考停止になっていたと思う。もっと月形高校の魅力をアップする方法を考えるべきで、町民の多様な思考の活用でできることはある。

JRは観光資源にはなるが、観光振興にはならないのでは?

「JRは観光資源になる」と鉄道ファンや存続を支持する人達は言う。確かに鉄道の走る風景は美しいし旅情もある。田舎の風景と相まって鉄道ファンが集まるのも理解する。ただ、それが地域を潤すための観光振興には繫がらないのではないか。
今回の問題をきっかけに、ネットで鉄道ファンなどのブログを色々見てみた。JR札沼線に想い入れを持っている人もいたが、その人たちどれだけ運賃を支払って乗ってくれているのかは微妙なところだと思った。撮り鉄は車でベストスポットに行くし、乗り鉄でさえも切符を求めて1区間だけ、1度だけである。今、必要なのは「鉄道によってお金を生み出す。鉄道によって地域が活性化する」ことであって、「鉄路が残る」のはその結果だと思う。

「JRの観光資源」を観光振興に結びつけるためには、地域にお金が落ちる仕組みがなければならないが、月形町の場合、それを受け入れられる飲食店や商店は本当に少ない。今「JR札沼線沿線3町長がバスガイドするツアー」をPRしているが、JRを利用するのは一部の区間のみで、基本は札幌のバス会社が企画するバスツアーなのだ。
観光資源を観光振興に結びつけるには、相当の仕掛けと労力が必要である。その覚悟や準備が自治体にあるのだろうか? 職員や地域おこし協力隊を配置しただけでは活性化できない。

以上が、個別具体的な事例も含めた、私のJR札沼線に対する見解である。
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JR札沼線問題は本来なら多くの町民が集まる公共の場で、様々な視点による議論で結論を導き出したい。だが今の月形町では情報格差が大きく議論にならないように思う。このことは先日の「町民と議会との懇談会」でも見て取れた。現職議員と議論しようにも危機感がまるで違っていた。前提となる基礎情報が全く共有されていないので話にならなかったのだ。

そこで町には、まず町民との広報広聴の場を持ってほしい。その際には以下の内容の情報を提供してほしい。

(1)JR札沼線に関する様々な協議状況の説明(JR、沿線自治体、道、国との協議)
(2)北海道の考え方の説明(鉄道ネットワーキングチームの報告書の解説)
(3)月形町としての基本的な考え方
(4)様々なデータの提示
   例)・JR北海道の経営状況
     ・JR札沼線の維持管理費の実態と推計(今後の予測も含む)
     ・JR札沼線を維持するための人員数(運行だけでなく維持管理も含む)
     ・JR札沼線の利用状況(各駅利用人数と年次変化等)
     ・JR札沼線沿線の人口推計
     ・JR札沼線(鉄路)維持経費とバス転換後の運行経費の比較
     ・地域交通維持のための交付税充当額(鉄道維持とバス転換の比較)
     ・月形町の財政状況と推計(今後支出が増大すると見込まれる事業の提示)
     ・その他、関連すると思われる情報

JR存続問題は例を見ないスピードで展開している。
地方自治、市民自治をめざす私たち町民は、当事者としてその議論に加わっていきたい。

comments

私の結論はJR新十津川駅からJR滝川駅への鉄路の延伸であります。その間わずか僅か3km、石狩川に掛ける鉄橋を構築したとしても、あるいはトンネルを採掘したとしても、更に滝川市を超えて深川、旭川、更には留萌へと札沼線沿線在住市民による使用度は倍増するとの私の推定です。少なくとも、鉄橋案を計上し、それによる鉄路の推定使用度の調査は廃炉線と並行して考察されるべきと考えます。

札沼線の活性化あるいは維持は利用者の数です。路線駅周辺の行政がいくらジタバタしても利用者が減少する限り、採算が取れず、それは無理と言うものです。JRの赤字路線を国民の血税が穴埋めをする、と言う考えは、全てのoptionsを考察した後にやってもらいたいです。この延伸鉄路の構築が実現しますと、利用者は自然と増えますが、特に沿線駅から滝川、深川、留萌、旭川、あるいは遠くは稚内方面まで行く利用者には割引切符の提供をするとか、その割引負担は沿線行政が負担するとか、利用者を増やす種々の方法もあると言うものです。又3kmの延伸における鉄橋の構築は膨大な予算を計上しなければなりませんが、その為にも地域から選出されている国会議員がいるではありませんか!彼らに直接政府にJRあるいは道と共に交渉してもらうべきかと思います。

路線使用者の真理として、廃線に代わるバスなどの交通機関は不便そのものであると考えます。特にこの延伸の実現による恩典受益行政は札沼線路線住民のみならず、滝川市かも知れません。鉄路廃線、そしてその間のバスによる代行交通には将来がありませんし、夢がありません。もう少し将来を考えるべきかと思います。

私は新幹線大阪駅の不合理さを唱えたことがあります。その通りになりました。又北海道新幹線北斗駅周辺活性化に関しても否定的な推定をしてきました。その通りになって来ています。私は又、北海道新幹線新小樽駅の不合理さを指摘しています。おそらく私の予言通りになると確信しております。反対、賛成意見はいくらあっても良いのですが、それらの意見を実践的に裏付ける確証が必要です。

この延伸案は廃線と言う否定的な案に対する画期的な案かと思います。それは殆どの人たちが想定すらしなかった案であります。しかし、この延伸によって、どのように沿線住民が鉄路を利用するかの統計にかかって来るかと思います。「廃線ありき」ではなくて、「鉄路ありき」と言う夢, あるいは仮定が不可欠かと思います。

星  功
小樽・後志消費者協会会長

  • 星  功
  • 2017年12月23日 13:16

  •     

星様、コメントありがとうございます。
掲載と返信が大変遅くなり、申し訳ありません。

JR問題に関しては、それぞれの視点により将来展望がかなり変わる問題だと認識しています。

新十津川駅〜滝川駅への延伸は、もう何回も話題に上っています。過去には実現に向けて詳細に検討されたこともあるようです。その頃は利用者もそれなりにいましたし、何より線路等の設備や施設がまだ充分に新しかった頃です。それでも採算が合わないとなりました。今となっては札沼線の保線管理が充分でなく、本線に比べ明らかに劣った状態です。利便性を発揮するほど列車を走らせることは難しいと考えます。それ出も運行しようとすれば、修繕費がかさむのは必須。結局「時機を佚した」のだと考えます。

  • 宮下ゆみこ
  • 2018年03月23日 10:24

  •     

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