2015年02月06日

農村社会・農業経済において、女性は新規参入者なのかも!【2015きたひとネットフォーラム】

2月5日(木)、きたひとネット(北海道女性農業者ネットワーク)の総会とフォーラムが北大でありました。会場には全道各地から120人近くの年齢も農業形態も様々な女性農業者と関係機関のみなさんが、1年に1度の楽しみと情報交換の場として集まっていました。

今年のフォーラムのテーマは「創る」。副題は「農業者である自分の10年後を創るため、今、何をする?」という投げかけ ・・・ はて、私自身は何をすべきなのか? どうしたいのか? ・・・ ここのところ「農業」づいている私は、様々な視点や状況に思いを巡らせながら、2年ぶりに参加してきました。

フォーラムの中心はパネルディスカッション。以下のメンバーで約2時間、会場も交えながら積極的な意見交換がなされました。
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パネルディスカッション 
テーマ「経営にどう参画しているの?」

パネラー  
■江面 暁人さん
 :江面ファーム(畑作/遠軽町/35歳)

・北海道出身の非農家新規就農者。
・大学進学のため東京へ。IT系企業で働くも、将来的な家族の有り様を考えた時、職業としての農業に魅力を感じ就農を決意。30歳から1年間北見で研修。その後、遠軽で2年間研修を行った農場を第三者経営継承で引き継いで独立。
・42haの農地で馬鈴薯、ビート、小麦、スイートコーンを作付け、多くは系統(農協)出荷し、一部をインターネット直販。加工(新商品開発)も行う。
・冬は民宿、夏はボラバイトの受け入れ等、アイデアを事業化。
・会場には奥さんも(子どもさんは会場内託児を利用)。ともに研修をし、事業を展開しているパートナーとしての意見は流石!

■荒川 恵美子さん:(有)オサラッペ牧場(肉牛/旭川市/64歳)
・京都出身。元保育士。結婚相手(非農家)と約40年前に新規就農。旭川へ。
・当初はホルスタイン雄仔牛の哺育育成をしていたが、肉牛(短角牛)に切り替える。こだわって育てた短角牛であっても、サシの有無で等級が決まる今の市場では高値が付かないことから、自分で加工も手がけ、直接販売する。
・その後、ゲストハウス・オサラッペを建て、農家レストラン&ファームインも。自ら全てを行うことで経費を抑え、お客さんに安くて美味しい肉を喜んでもらうために事業展開。

■高木 智美さん:高木農園(畑作/京極町/36歳)
・京極町出身。畑作農家の元に生まれ育つ。
・農業が嫌いで別の道に進もうとしたが就職氷河期。実家に戻り、夏は農業の手伝い、冬は職探しの日々。
・京極町4Hクラブで「楽しい農業」に目覚める(=農業技術や理論を学び、農作業の意味が理解できるようになり、毎日の作業にやりがいが出てくる)。
・その後、幼なじみと結婚、親世帯と同居。結婚3年目には経営移譲され、次の年には家族の役割変更(家事・育児はお義母さん、若夫婦は農業専念)。
・30haで馬鈴薯、ニンジン、小豆、他を作付け。夫も本人もトラクターに乗り農作業をする。農業の様々な面を知ることで興味が増し、農業がおもしろく、意欲も湧いている。

■角倉 円佳さん:(株)マドリン代表取締役(酪農/広尾町/31歳)
・広尾町出身。両親は新規就農者で、大規模な酪農経営(分業スタイル)。
・当初は酪農をする気がなかったが、高校、大学と進み、カナダケベック州の酪農研修先で理想の酪農スタイル(分業でなく、酪農の全サイクルに関わり全てを見ることができる酪農)と理想の経営者に出会う。
・帰国後実家で働いていたが、タイミングよく借舎で自分の牧場を持つことができた。搾乳牛40頭、育成牛と仔牛が40頭。全てを1人で管理。
・女性後継者も農業関係機関や会社で働く女性も増えてはきているが、未だ少数。既存の組織の中では視点が違ったり、理解されないこともあり、時に押しつぶされそうになる。仲間作りのため、同じ状況の人たちと年1回SAKURA会を開催している。
・この春に結婚し、近所に場所を移し全て自前の牧場を持つ。今後は1つの家庭として地域活動の担い手の役割も出てくる。今までとは違う状況だが、家族でがんばりたい。楽しみ。

コーディネーター
■植田 喜代子さん(酪農/湧別町/64歳)
・京都市出身。
・深川市の牧場で夫と出会い結婚。道内行脚の末、現在地に新規就農。
・北海道指導農業士。認定農業者。
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パネラーのうち、高木さんと角倉さんは地元育ちで経営参画する農業者。もし男性なら、いわゆる「後継者」として一般的な立ち位置なのでしょう。
けれど女性であるが故に農業に対する視点や感覚が違っていて、彼女たちのやりたいことが「今までの経営者」とも「今までの奥さん方」とも違っていました。自分のやりたい農業を既存の雰囲気の中で実現するにはエネルギーが必要で、それはまるで《新規就農者のようだ!!》と私は感じました。

それから彼女たちには理解者・応援者がいました。
高木さんは何度も「とっても良いお義父さんとお義母さんなんです。」「(夫は)やりたいって言ったら、やらしてくれるんです。」と言い、角倉さんも「(お父さんが)おまえやってみるかと言ってくれたので(やりたい酪農ができた。)」と言っています。彼女たちを《理解し、任せる人がいる》からこそ、彼女たちの「農業が好き」という気持ちと意欲がどんどん育っていったのでしょう。そういう支える人の存在もまた《新規就農者みたいだ!!》と思えました。

と、私はここまで《新規就農者みたい!!》と言いましたが、キチンと表現すれば、彼女たちは《開拓者》です。今までと違う側面を切り拓く開拓者。

既に成熟した社会というけれど、モノの見方、考え方をちょっと変えるだけで、開拓されていない分野はたくさんあり、伸びしろも、面白さもそこにはあるんだなあと再認識。そうですよね。そうでなくっちゃ息苦しい世の中しか残ってない。そんなはずないもの。
その切り口を《女性》が持っていることは確か。農業分野だけでなく、社会全体もそう。そう《女性》が切っていかなきゃ。

最初、農業が嫌いだった彼女たちが、今のように意欲的になったプロセスは以下の通り。そのポイントにキーパーソンが出てきたのも共通してて、実におもしろかったです。
嫌い → 知る → 興味 → 好き → 意欲 → ・・・
まちづくりや子育てにも応用したいですね。

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