2015年02月04日

新規就農者の赤裸々な経営実態を披露【花・野菜ベーシックセミナー講師】

今日は立春。朝からずっと快晴の青空で、お日さま具合を見ていると「あ〜、春も近いなあ〜」とのんきな気持ちになりますが・・・ 今朝は放射冷却でこの冬一番の寒さ。月形町でも−19.7℃まで下がりました。窓には氷の花が咲き、ストーブも真っ赤に燃えていましたよ。

さて、本題。就農アドバイザー関連報告です。

このベーシックセミナーは毎年開催されています。興味を持たれた方は花・野菜技術センターまで問い合わせしてみてください。この他、4月から半年間の実地研修を主体とする総合技術研修や各種セミナーも開催されています。詳しくは→こちら。

本編をまとめるのに時間がかかってしまったので、前振りとは雰囲気が違う文章ですが、そこは目をつぶってくださいね。
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1月28日(水)、滝川市にある地方独立行政法人北海道立総合研究機構 花・野菜技術センターで講師を務めてきました。5日間にわたって開催されている新規就農者向けの【花・野菜ベーシックセミナー(基礎技術研修)】で、先輩就農者として経営事例と動向をお話しするためです。

セミナーには全道各地から、新規参入者(=農家以外から就農する人。研修中の予定者も含む)やUターン就農者(=農家の後継者)計27名(花きコース5名、野菜コース22名)が集まり、併設された研修所に寝泊まりしながら研修を受けます。

研修内容は、それぞれのコースに分かれて学ぶ基礎技術科目[栽培概論、栽培基礎Ⅰ〜Ⅴ、輸送と鮮度保持(花きコース)、流通と内部品質(野菜コース)]と、共通科目[土壌改良と施肥管理、施設資材の特性と利用、経営管理概論、新規就農者の経営事例と動向、経営事例の総合討論、農地制度の基礎、病害虫]とがあり、毎日午前9時から午後5時まで行います。

講師は花・野菜技術センターの普及指導員や研究員が中心ですが、外部講師として北海道銀行地域総合研究所の上席研究員(経営管理概論)や北海道農業会議の業務次長(農地制度)の他、北海道農業公社就農相談課の就農コーディネーターや先輩就農者(花き・野菜各1名)が加わりました。
私は講師(花き生産の先輩就農者)の1人として、「新規就農者の経営事例と動向」と「総合討論」に加わりました。

講義「新規就農者の経営事例と動向」の内容は以下の通り。研修生が何を知りたいのかを自分なりに突き詰めていったら、以下の内容になりました。
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1.自己紹介・・・ まずは普段の私をさらけ出し、私を理解してもらう。

私の作業着姿や家族構成、借家である自宅、自宅から1㎞離れた圃場に建てた撰花場、古くて錆び付いたハウスや使い回しのビニール、2012年の豪雪で倒壊したハウスの様子など、きれい事でない現実を紹介。

2.経営の基本姿勢・・・ 栽培している花と選択した理由。技術や着眼点など。

ポイントは
■新しい技術の導入や種子の個人輸入など、労力と経費の節約に努め、効率的な経営をめざしている
■生産する品目は需要側の視点で選定している(物日、ニッチ市場、リスク分散)

3.20年間の経営状況・・・ 年次ごとの借金返済額・農業収入額・所得額の推移

この部分はかなり赤裸々に紹介(ちょっと恥ずかしい現実)。農業収入が上がっても所得が増えない実態や、思いがけない出来事(台風での被害、単価の暴落、子どもから肺炎をもらい入院、豪雪による施設の倒壊・・・)で収入減になる現実。されど経験と技術の積み上げが所得につながる事実など。

20年間を通して目指すところは変わらないものの、それを達成する手段(営農形態や働き方)や最終目的が変わってきたことを紹介。
■所得を得る(売り上げを上げる → 収益の確保/収益構造の見直し)
■高効率化 (所得を上げる   → 時間を作る)

4.まとめ・・・ 考えて欲しいこと

■自分にとっての[農業の価値]とは何か
■営農における[リスク分散]の方法
■[収入減への備え]
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「人に伝える」ということは、それ以上の学びや気づきがあるもの。講師を引き受けたことで新規就農してからの20年を振り返ることができ、私たち家族が大切にしてきたものは何か、どうやって課題を解決してきたのかなどを改めて分析することができました。

講義終了後、ある研修生が私に
「先生の講義や研修生仲間と話して気づいたことがあります。世の中には様々な技術や資材があるけれど、それらは基本であって正解じゃない。コーディネートして自分の農業にしていく(新しく作り上げる)ことが大事なんですね。それを選択できるようになるために、技術や知識を学ぶことと、チャレンジして経験を積んでいくことが大事。ああそうかって、解りました。」
彼のキラキラした眼が印象的でした。

そう、農業をしていると上手くいかないことも多くて、生活も苦しくなって、どうしようかと途方に暮れることもあるんです。でも、少し先を見て、しぶとく生き残り続けることが何よりも大事だと思います。苦境に耐え、継続することで力が付きます。

どうかたくさんの新規就農者が、自分の農業を確立して、農業者として自立できる日が来ますように。

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