2012年02月26日

道北地域地方自治土曜講座(2012.2.18)

地域の課題をテーマに地方自治を考えようと、道北地域自治体関係の有志の皆さんが立ち上げた『道北地域地方自治土曜講座』。昨年11月に9年ぶりに復活し、2回目の講座が先週の土曜日(平成24年2月18日)にありました。

「地域から地域の課題を考える」という趣旨と、主催者の中に以前から交流のある意識の高い自治体職員の名前があったことなどから、復活のお知らせを聴いてとても興味をそそられていました。初回は都合がつかず参加できなかったので、今回は準備万端、楽しみにして参加してきました。

会場は旭川大学。40人近くの参加者(自治体職員、首長、議員、学生、一般)があり、質疑も活発に交わされ、とても活気のある講座でした。個人的にも「新たな視点・発想」を得ることができ、有意義な時間になりました。

「道北」「旭川」というと札幌圏には「遠い」存在に写るかもしれませんが(私がそう感じていただけかもしれませんが)、交通の便も良く余裕を持って日帰りできる圏内ですし、道北の抱える課題は小さな自治体が直面しているものと近く、実は非常に身近な存在で、参考になる要素がたくさんあることを今回参加して再認識しました。
それになによりも、「自分たちで何とかしなければ」という危機感(意識)が高く、前向きのエネルギーがみなぎっていることが素晴らしいです。参加者と接するだけでプラスのエネルギーを得ることができました。

今まで、勉強の場を求め札幌に出掛けていましたが(実際に開催場所のほとんどが札幌ですが)、全ての分野で一極集中する「札幌」では見えない(考えられない)ものが「道北=地方」にはあると感じました。その場の空気感というか、全体として醸し出す「気」のようなものです。
もっともっと地方に目を向け出かけていくことの必要性と、地方からの積極的な発信や呼び込みも必要だと感じた「道北地域地方自治土曜講座」でした。

以下、当日の講演内容のうち、私の印象に残った点を紹介します。
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  道北地域地方自治土曜講座

講演1「財政制約と地域の再生」
講師:北海学園大学経済学部 
    准教授(地方財政論)西村宣彦氏

■持続可能な地域づくりとは?
・「持続可能な社会づくり」
 ・・・1990年代から使われ出したが、曖昧な言葉
・持続可能な発展とは、環境を守りながらも経済
 発展をも認めること。別の要素を認めること。
   ○環境を守る=将来世代の権利を認める。
   ○経済発展を認める=現世代の繁栄


■現在の日本における持続可能な地域づくりとは?
・人口が減少しても生活の質が低下しないよう、いかに賢く縮小(衰退)するか
・コンパクトシティ論は都市部の論理では
・3.11以後の課題は、
 [地球温暖化対策+放射能汚染のリスク+汚染された現実]にどう向き合うか

■破綻と再生のマチ・夕張から見えてくるもの
・社会にとって夕張問題は「もう過去のもの」だが、地域にとっては現在進行形
・財政規模約40億円の夕張が、353億円の赤字を返済するという現実
 (3年で31億円返済済)
・夕張問題=やりながらの改革(=財政の再生+自治の再生+地域の再生)
・過疎化=誇りの空洞化
・財政破綻した自治体は、
 迷惑施設(例:産廃処分場、放射性廃棄物)と向き合う場面が増える。

■「危機」とどう向き合うか・・・分断をなくす
・世代間対立(世代間の意識ギャップ)からの脱却
・世代間連帯の再生(血縁 → 地縁へ)
・自治体連携の強化(地域を越えて、互いにないものを補完しあう関係)
・[自治体職員・議員 ←→ 住民] 心の溝は深い。
 情報開示、情報発信、コミュニケーションで共感を広げる。信頼回復もあり。
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講演2「過疎地における地域再生の可能性 
   −新規参入者と在住民による
          協働実践を事例として−」
講師:旭川大学保健福祉学部
    助教(地域社会学)大野剛志氏

■農山村地域の実態
・四重苦
  ○雇用機会の縮小・・農林水産業の衰退による
  ○生活苦・・・・・・・・・公共部門の縮小による
  ○コミュニティ崩壊の危機・・限界集落、消滅集落
  ○地域資源の荒廃と維持管理の困難    
・道北は日本社会の最先端(年少人口率、高齢化率、限界集落数)
・過疎と少子高齢化の根本問題は
  ○定住性の低下=安心して住めない
  ○地域社会の支え合いの絆がこわれる
   =社会的弱者(子供・高齢者・障がい者)の生活困難

■新規参入者への着目(農業・農村の活性化への期待)
・新規参入者=自由な発想が可能な人材
      (異質なライフスタイル=在住民にない価値観・知識・技能)
・これまでの研究は「新規参入者を受け入れる側の視点」しかなかった。
 今回の研究は「新規参入者が何を与えたか」の視点。

■地域再生の事例研究
【長沼町:新規参入者と在住民の協働による新たな農業の実践】内部変化のきっかけ
 □新規参入者(定年退職者)に経営能力あり。グリーンツーリズムのアドバイザーに
 ・「生産型」から「採算・流通・販売型」へ。
  経営指向性の高い「複合型経営」農業のノウハウを実践しながら伝える
 ・生産農業がダメなら体験農業へ。新しい農業のアイデアを提供
 □新規参入者(退職者)が退職金を元手に、地域農産物を食材にした農家レストラン
 を開店 → 農家レストランが農村に都市を巻き込む

【東川町:過疎地における小地域福祉活動の実証研究】
 ・家族福祉の限界が明らかな状況で、「地域福祉」が求められた
 ・自治振興会によるサロン活動で
  福祉活動の組織化や福祉のネットワークづくりに取り組む
  (行政主導の自治振興会から、地域住民が主体の小地域福祉活動へ)
 ・サロン活動の中身=お昼、お茶のみ、レクリエーション、ゲーム、健康相談、他
 ・サロン活動リーダーのやる気と行動力がカギ(創造性、実践性)
 ・ある地区のサロン活動のリーダーは新規参入者。自らの介護体験を活かす行動

【2つの事例研究からの発見】
 ・新規参入者の存在は、地域の構造変化をもたらす
   新規参入者のアイデアと実践が土台 → 日常的活動へ → 町内に活気
 ・新規参入者は農山村に「新しい風」を運ぶ媒体になり得る
 ・農村回帰(I・J・Uターン)の社会現象
  →「ゆたかな農村生活」を選択した人=期待できる存在

■地域が内部から変わり発展するには
 ◎地域活性化運動の担い手の小さな活動から、多くの住民を巻き込んでいくこと
 ◎[身の丈にあった][身近なこと][今できること]から始めること
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今回の講演内容は、ともすれば[ありきたり]と捉えられかねないテーマですが、今までの研究との視点の違いを感じるもので、私にとっては多くの気づきがありました。

ブログを書くに当たって講演内容を再度振り返ったのですが、たくさんの資料と新たな視点をどうまとめるか、思いのほか時間がかかってしまいました。が、その分、丹念に考えることができて整理がつきました。復習は大事ですね。

私も月形町にとっての新規参入者の一人です。私が普通に感じ考え行動することが[新しい風]になっているという体験もしています。が、まだまだ成果としては充分ではありません。ただ[身の丈にあった][身近なこと][今できること]をしているだけなので負担感もなく、むしろその過程を楽しみながら実践しています。あとは共感と広がり。

地域を巻き込み、その過程も楽しみながら進めて行きたい(いかなければなりませんね)。

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