2011年03月26日

バイオマス亜臨界肥料製造見学会(高温高圧処理システム)

20110309c.jpgバイオマス亜臨界肥料は、高温高圧処理システムによって有機物を肥料化した物で、「特定非営利活動法人北海道資源循環研究所」が中心になって研究が進められています。まだ試験段階のものですが、平成22年度廃棄物資源循環学会・北海道支部セミナーでも発表され、注目されています。

この肥料をつくるために使われる「高温高圧処理システム」とは、現在月形町が今後のゴミ処理方法として、美唄市と検討しているものと同じです。有機物を原料に、処理時の温度と圧力をコントロールすることでアミノ酸を多く含む肥料を製造できるという優れものです。

原理は、圧力釜の中に材料と蒸気を入れ高温高圧にすることで臨界水ができ、それによって有機物中のタンパク質がアミノ酸に、炭水化物も糖類等に速やかに分解されるというもの。処理時間と温度をコントロールすることで肥料になったり、燃料になったりします。なお生成物(処理後にできあがったもの)の成分は材料によっても左右されます。

見学会場は、民間企業で高温高圧処理システムを導入している㈱エコアクティブ三笠エコプラント工場。普段は医療系廃棄物を処理しているのですが、特別の許可を取り約2週間にわたりバイオマス亜臨界肥料を製造しました。この期間中、廃棄タマネギ(腐れてひどい臭気)、下水処理場の汚泥等を原料に、粉体肥料と液肥を製造していました。

私が見学に行った3月9日は、下水道汚泥(全道各地から集めた下水道汚泥の脱水ケーキを1年間寝かした物)を原料に粉体肥料がつくられていました。
生の材料は臭いもきつく、ベッタッとした状態。処理機から取り出されたできたてホヤホヤの肥料は、湯気が立ち上り温かく、多少しっとりした状態(写真手前ができたての亜臨界肥料。奥が原料の下水道汚泥の脱水ケーキ)。煎ったような臭いがする程度で、原料の汚泥の臭いは全くありません。

工場内には別の原料の肥料もサンプルとして並べられていました(今回製造された物の他、以前に別の施設で試作されたものも含まれます)。液肥はカラメルのような粘土のある濃い茶色です。どの肥料も材料により臭いが違うのですが、いずれも臭気対策にもなっていました。
■原料)ホタテのウロ → 液肥:濃厚なホタテの出汁の匂い
■原料)廃棄タマネギ → 液肥:タマネギのフライのような香ばしくて美味しそうな匂い

今回製造された肥料は、これから協力農家のもとで栽培実験が行われ、肥効などが調査されます。100%有機物からできた物なので、有機認証農家も使用可能とのこと。また原料が廃棄物であることと、高温高圧システムはランニングコストが安いことなどから、製造コストも抑えられそうだとのこと。農家にとっても有用な資源になるのではないかと、期待されています。
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20110309a.jpg今回見学させていただいた工場は、圧力釜である本体(5m3)+蒸気発生用ボイラー+水処理施設+脱臭装置の非常にシンプル・コンパクトな作りでした。

以前、月形町のゴミ量で高温高圧処理システムを導入する場合の本体容量を、道庁関係者に伺ったところ「5m3×1機で充分処理できる」との答えをいただきました。今回の工場と同じ規模です。
また見学工場関係者に伺ったところ、このシステムを導入してから既に7年が経過しているので、水処理や脱臭装置などはもっとコンパクトで性能の良い物ができている、とのことでした。
(ただし、三笠の工業団地は団地として下水処理システムを持っているので、月形町内で建設する場合は、もう一段の下水処理が必要かもしれません。)

また、この工場では通常、医療系廃棄物を処理しています。医療系廃棄物は塩ビを使用しているものが多く、生成物の塩素濃度が高く燃料には使えないので産業廃棄物処理場に処分しているとのこと(高温高圧処理により、病原体等生物由来の汚染物質は完全死滅するので安心)。
これを応用すれば、農家から出る農業用ビニール(農ビ系)も自前で処理できることになります。

高温高圧処理システムを導入することで、一般ゴミを臭気問題なしに減量化できるだけでなく、生ごみ等有機物を肥料に、農業用ビニール(農ビ系)を自前で処理することができるようになります。

今まで【一般ゴミ → 燃料】ということで、バイオマスボイラーの導入を中心に考えていましたが、それがこのシステムの建設コストを押し上げているとしたならば発想を転換し、
【一般ゴミの減容化と適切な処理】・・・一般ゴミ
【有用物質の資源循環】・・・・・・・・生ごみや農産廃棄物、有機物処理
【他の廃棄物処理への応用】・・・・・・農業用ビニールの処理
と言う方向で考えれば、初期投資を少なくして施設そのものを有効活用できるのではないかと考えます。月形町単独で施設を持つことも、費用対効果を考えれば有用なのではないかと。

現場を見ることで、関係者と話しをすることで、新たな展開が見えてきました。

なお、今回の見学会には月形町役場からも職員が参加しましたし、地球を愛する会@月形のメンバーも。今後検討を進めるにあたって、情報を共有できたということで意義がありました。



【2011.4.8 追記】
本記事中、一部内容に誤りがありました。今回の亜臨界肥料製造実験の原料は廃棄タマネギと2種類の下水道汚泥で、ホタテのウロを原料にした液肥はサンプル展示のみでした。本文は修正済です。
         

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