2010年12月11日

第3回北海道アライグマ慰霊祭&小講演会(2)

続きです。ここでは小講演会の内容を紹介します(私の印象に残った点を記載します。)
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

1.北海道の外来種対策について 
           猪川周二氏(北海道環境生活部環境局)

■外来種について
・外来種問題:野生生物が本来の移動能力を超え、国外または
       国内の他地域から人の行為によって導入され、その生物(種)がその地域に固有の
       生物相や生態系に対して大きな脅威になっている問題
・外来生物法(特定外来生物による生態系等への被害の防止に関する法律)平成17年6月施行
・生物多様性基本法 平成20年6月施行
北海道ブルーリスト(北海道における外来種リスト)
・現在、外来種とされているのは2,000種以上。うち道内には860種。全てが駆除対象ではない。
 (駆除対象=特定外来生物は全国で97種が指定されている。アライグマもその1つ)
・外来種の問題点:1)生態系の破壊、 2)菌の媒介、 3)食害(農業被害)
■北海道のアライグマの状況
・目撃情報:平成4年 13市町村 → 平成22年12月現在 136市町村
・捕獲に熱心な自治体:札幌市、石狩市、江別市、月形町など
・現在は市街地と農地を中心に捕獲 → 森の中に残ってしまう
                   根絶に向けた対策必要:例)木にかける巣箱型ワナ
・分布を把握するための手法:カメラトラッピング調査、ペットボトルトラップなど
■外来種対策=「入れない」「捨てない」「広げない」、様々な連係プレー   

2.アライグマとはどんな動物か?      阿部 豪氏(兵庫県立大アライグマ研究グループ)

■アライグマの現状
・神戸市(兵庫県)は超高密度地域。母集団が大きくなっていて酷い状況
・北海道は低密度地域。この段階での対応が重要だが、労力と成果のバランスの悪さ(ワナを掛けて
 も捕獲できないなど)から住民意識の低下がおき、対策を進める上で新たなの課題が出てくる。
■アライグマの生態
・アニメ「あらいぐまラスカル」はアライグマの生態をよく現している
・発情期前(子ども)のアライグマはとてもなついてカワイイ(ラスカルの様)
  → 捕獲オリにかかった子どものアライグマを飼いだしても、発情期を迎えると凶暴化。
    力や勢いもあり、1年以内にオリを破って逃亡するか、2次放出 → 生息域の拡大
・アライグマは飼うには不向きな動物
■捨てられた命は、決して幸せにはならない
・飼いきれなくなったペット → 野山に放つ → 大半は死亡(ほとんどが交通事故)
 ・・・生き残ったモノ → 生きるために手に入りやすい食料や住居を求める
                 → 農業被害、住居侵入 → 駆除 → 死
・道内で1年間に駆除されたアライグマ数: 4,115頭(平成21年)

■質疑応答
Q アライグマにしかできない行動を応用した、具体的な対策はできないか?
A アライグマは3次元的に行動するので、木の上にオリを仕掛けるなども考えられる。
  多様な方法の研究は必要と考えるので、国などにも要望している。

Q アライグマのみに効くような毒餌の開発や、アライグマトラップでの毒餌の使用はどうか?
A こぼれた毒餌を他の生き物が食べる可能性や、毒餌で死んだアライグマを他の動物が食す問題
 (生物濃縮)など検討課題が大きい。また自然界での毒物の使用には社会的な合意形成が必要。
  まずは地域全体で対策を取ることが先決ではないか。毒餌を使う様な段階ではないと思う。

3.畜産地帯で捕獲されたアライグマのサルモネラ保菌調査  藤井 啓氏(道総研 畜産試験場)

・サルモネラは人獣共通感染症の病原体の1つ
・様々な対策をしているにもかかわらず、道内の牛のサルモネラ症発生は続いている
・アライグマ、カラスは保菌が確認された。
・ネズミは全く保菌していない。
   ↓
 アライグマ・カラス・牛の間には、直接的または間接的に何らかの関係がある → 対策必要

4.中学理科としての外来生物へのアプローチ 北海道中学校理科教育研究会

新指導要領で初めて「外来種の扱い」に言及している(平成20年からの移行期間から対応)
 ただし、学習時期は中3の1〜2月。通り一遍の知識までしかできない。
■特定外来種アライグマの理科授業での教材化
           ・・・三浦雅美氏(札幌市中央中学校)

・中2の「動物の身体の仕組みと生活」
 〜アライグマの身体の特徴と生態〜の単元で実施
 アライグマ研究グループ代表の阿部豪氏との共同事業で実現
・アライグマとタヌキを比較し、同じ作りでありながら生態的
 特徴は全く違うことを学習。標本(右の写真)も活用。身近
 な自然、生態系、多様性、人為的行いとその影響等を考える
・与えられた知識だけでなく、自らの考えを持つことが大事。
 道徳的示唆もあった。
■その他・・・佐々木彰彦氏(札幌市福井野中学校)
・生徒には、全ての知識がバラバラに入っている。知識と現物
 が繋がっていないのが現実。
・「何かが違う」ということに気付きにくい。
 現物を見せることで、その後の生徒の反応が全く違ってくる。

5.月形町の取り組みについて(書面による報告)   今井 学氏(月形町※)

■アライグマ捕獲の実践を通じて得た知識や捕獲方法についての情報提供
・今井氏本人の経験にもとづいてまとめた資料の配付(PDF
■月形町の状況
・月形町では平成14年に最初の目撃。平成17年から目撃数が増え、平成19年から本格的な取り組み
 [捕獲数の推移]H19年度:35頭、H20:129頭、H21:174頭、H22:30頭(予測)
・効率的な捕獲により月形町内(の居住地、農地付近)では密度が減少している。
■アライグマの被害対策を進める上で重要なこと
・被害者の意識の改革が重要。行政お任せでなく、被害者自らが対策を練り対応していくこと
・情報の共有化など、ネットワークが重要
・捕獲方法の確立、行政の迅速な対応(予算、体制)、町民の積極的な行動 → 成果
■意見交換から
・被害対策の成果が出たあとの対応が重要であり、難しい。
  捕獲数が減少しても捕獲圧をかけ続けること。
・市街地、農地での生息密度は減少しても、奥地や山間部での状況は分からない。
・教育との連携。道徳心への訴えかけなど、様々なアプローチでの対応が必要か。

※今井さんは月形町有害鳥獣の担当職員であり、猟友会の一員としてもアライグマの駆除に関わってきました。個人的にアライグマの生態や駆除方法について研究を重ね、その成果を個人のHPで公開しています。また職務として、捕獲技術に関する講習会(第1回第2回)を開催しています。
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

アライグマ=外来生物というくくりで、同じ農作物被害を出している「シカ」とは所管が違っていることを知りました(言われてみればもっともなことですが・・・)。現場での課題を解決しようとした時、それを仲介する立場(末端行政職員か、研究者か、議員か・・・?)の人はこれら制度に精通した上で「通訳」「仲人」「プロデューサー」にならなければならないのですね。関係者の熱い思いがありながら、それらがスムースに進まない現実を垣間見た想いです。

私はこれまで「農業被害」の観点から「アライグマ」に関心を寄せてきましたが、ここに集まった人達は様々な視点で「アライグマ」を捉えていたことがとても興味深く、考えさせられたと同時に新たな展開のヒントも得ることができました。ネットワーク作りとは、縦方向も横方向も必要なのだと改めて感じました。

月形町における次の展開は、やはり「教育との連携」でしょう。学校教育ばかりでなく、地域生活に密着した中で、道徳的観点から進めるべきと感じました。そのためには、まず行政が縦割りの意識を変えなければなりません。そこに議員としての私の役割もありますね。

comments

コメント・フォーム

(ゆみこの日記 にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)

コメント・フォーム

▲TOPへ戻る