2010年11月09日

平成22年度 南空知国保運営協議会委員等合同研修会

22kokuhoyuni3.jpg10月28日午後、由仁町の健康げんきづくり館で南空知5町(栗山町、南幌町、長沼町、由仁町、月形町)の国民健康保険運営協議会委員と町職員事務担当者の合同研修会が行われました。月形町からは委員3名と事務局1名の計4名が参加、全体では40名ほどの研修会となりました。

研修は講演が2つ。1つ目は国保連合会の事務局長・大原氏によるもので今年で3年連続となります。もう1つは道職員国保担当から(写真)。いずれも現状制度の説明が中心でした。

22kokuhoyuni4.jpg研修会開始前の時間を活用して、会場の「健康げんきづくり館」と棟続きの由仁町介護老人福祉施設「ほほえみの家」の視察が行われました。「ほほえみの家」は特別養護20床、ショートステイ10床。もともとショートステイを主体にして約10年前に開設され、その後一部を特養部門に切り替えたそうで、2〜4人部屋が中心でした。今年度から指定管理を導入しています。

現在、「ほほえみの家」と道路をはさんだ隣接地に、民間の福祉法人が特別養護70床の施設を建設中です。これが完成すれば地域のニーズに概ね応えられるのではないか、それでも今後の高齢社会を見据えた時にはまだまだ充分とは言えない、とのことでした。
今後のニーズ把握と財政的負担、様々な視点から福祉は進めなければならず、悩ましい問題です。

さて、講演内容で注目した点を以下に記載します。最後に私の感想と意見も。
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

『国民健康保険を巡る諸情勢について』
             北海道国民健康保険団体連合会 事務局長 大原幸雄氏

■ 社会保障給付費の推移(国全体としての傾向)
・国の社会保障給付費総額は年々伸び続け、平成21年(予算ベース)には99兆円に達した
・給付費の内訳:年金5割、医療費3割(年金の伸びが大きい。医療費も若干の伸び)
・この給付費を賄うため、保険料(個人や事業所の支払い分)で約6割、公費(国や地方)で約3割
  などの組み合わせで支出する。
・社会保障に対する国庫負担は25兆円を越えている。これは一般歳出の48%に当たる。
◎スウェーデン、仏、独、英、米との比較では、社会保障給付費と国民負担率はほぼ比例。
  ○高い順に スウェーデン > 仏 > 独 > 英 > 日 > 米
  ○日本の特徴:高い高齢化率により、年金・介護の割合が高い
         (ただし、福祉全般に対する支出はかなり低い)  

■ 国民健康保険の現状 
・年齢構成:0歳〜64歳(若年〜生産世代)の加入者は年々減少
      65歳〜74歳(他に比べ医療費が高い世代)は増加し、平成20年度で約3割
     (75歳以上はもっと医療費が高いが、後期高齢者保険により除外)
・加入世帯の状況:所得なし〜年収200万円未満の加入者が大部分を占める
・市町村国保の保険料(税)収納率:平成20年度現年度分の全国平均 88.35%

■ 平成22年度 国保制度の見直し(抜粋)
・市町村国保の運営の広域化 → 都道府県による広域化等支援方針の策定など
・市町村国保の保険料のあり方の見直し → 賦課限度額の引き上げ(59万円→63万円)
 ※国保の賦課限度額は、社会保険に比べ低い(例:協会健保 93万円)。今後も上げていく。
  ただし、中間層の負担は大きい(同所得の場合、社会保険の約2倍の負担)

■ 新しい高齢者医療制度(後期高齢者医療制度の廃止後の展開)
・現行の後期高齢者医療制度は都道府県単位、個人として加入
 (一般の国保は市町村単位、世帯が加入)
・後期高齢者医療制度は廃止し、
 平成25年度から新制度創設の見込
・新制度では75歳以上もそれまで加入していた保険(国保や
 被用者保険)にそのまま加入。ただし、74歳以下は市町村
 単位の財政運営、75歳以上は都道府県単位の財政運営
 (国保=保険料は世帯主からの徴収 → 滞納増の可能性から、年金天引き継続の考えもあり)
・将来的には、国保部分は全年齢を対象にした都道府県単位の財政運営にする

【課題】・都道府県単位の財政運営対象を75歳以上のままか、65歳以上まで引き下げるか
    ・都道府県単位の運営主体をどこが担うのか(現在、都道府県の多くが受け入れに反対)
     市町村との事務分担をどうするか
    ・医療保険制度間の財政調整をどうするか。被用者保険間の具体的な按分方法は?
    ・公費負担のあり方は?
    ・新たな特定検診等の推進方策は?(現在は後期高齢者支援金の加算・減額で対応)
    ・前期高齢者(70〜74歳)の患者負担をどうするか(現在は暫定措置で1割負担)
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

『北海道の国保の状況について』
        北海道保健福祉部健康安全局国保運営グループ 主査(調整) 小林秀己氏

■ 広域化に向けた取り組み
・国保の広域化は、市町村合併や広域連合制度
 (全国に4つ、うち道内3つ)により実施されてきた。
・平成17年度の国保法改正により都道府県調整交付金が創設
 され、都道府県の役割と責任を強化
 (広域化に向けた第一歩。
  ただし市町村の事務手続きが煩雑・複雑化)
    ↓
 再保険(保険財政経堂安定化事業の充実)、広域化(算定方式の統一)により平準化を目指す

■ 広域化への課題
・市町村毎の加入率、構成割合、算定方式(2方式・4方式)の違い
・医療環境 = 医療機関が集中している自治体は、総じて医療費が高くなる
【保険料格差の要因】・保険料の算定方式の違い
          ・保険加入者状況の違い(所得の違い)
          ・医療費適正化の取り組みの違い
          ・未収金の割合(収納率の違い)
          ・法定外の繰り入れの実施
■ その他
・道は国の方針に従い、平成22年12月末までに「広域化等支援方針」を策定予定であるが、
 将来的な「国保の運営主体」となることの受入は反対している。
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

市町村が国保運営の主体であることの最大の問題点は、
(1)人口規模が小さい(財政規模が小さい)ために、医療費負担の振れ幅が大きく安定しない。
(2)様々な財政措置により市町村間の平準化を図ろうとするも対症療法的な対策なので、
   制度が複雑。また事務手続きが煩雑で負担が大きい。
にあると思います。
このうち、(1)については何年も前から課題として取り上げられてきました。しかし(2)については問題としての認識が薄いように思います。

将来的な道筋が明解でないまま、三位一体改革や地方分権の名の下に「国から道」に役割の一部が移され、複雑化・煩雑化がどんどん増してきています。国保をどうするかを考える時には、この事務の繁雑さを解消すべく制度自体を根本から変えていかなければ、一部のお役人しか理解できない、何が正しくて何が間違っているのかも容易に理解できない「闇の制度」になってしまうのではないでしょうか。これから後期高齢者制度が廃止され、また新たな制度ができるとのことですが、その時も今以上に繁雑な事務が待ちかまえている雰囲気がプンプンと匂っています。

今回、道職員から「道の立場」が説明されました。国の方針に従い「広域化等支援方針」を策定するとしながら、「将来的な運営主体にはならない」と行っていること自体、大変疑問です。

将来に繋がらないのに、より複雑になる制度を受け入れなければならないなんて!
今回の研修会、私は終始気持ちが高ぶってしまいました。

1

▲TOPへ戻る