2010年08月22日
HOPS2010地方議員向けサマースクール(2)
第1日目、まずは議会改革に関した講義が2本。私の印象に残った点を記します。
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講義「議会改革に向けた政策の思考と議論」
北海道大学公共政策大学院教授 公共政策学研究センター長 宮脇 淳先生
◆地域主権=行政と立法を担えるということ
・「地方分権」と「地域主権」は看板を書き換えたようなもの。内容はそう変わらない。
・地域主権を達成するには「立法」の充実が重要。しかし立法を司る議会側の姿が見えない。
◆縦型ネットワークと横型ネットワーク
・縦型ネットワーク:旧来型の中央集権(標準化と階層化)、縦割り行政
→ 視点の硬直化が起きている(トップが変わらないことによる)
住民ニーズに対応できない(縦割りから外れたところへの視野がないため)
・横型ネットワーク:民主党政権が行おうとしている分権のモデル
目に付いたもの、声の上がったところから手をつける
→ まだメカニズムが出来ていない。混沌状態(新しいシステムと混乱の分岐点)
近視眼的になり、後で矛盾が出てくる
◆政治主導の裏に官僚主導(=交付金政策の拡大)
・交付金の基準を作っているのは誰か?
・基準が曖昧な「交付金政策の拡大」と基準がはっきりしている「補助金行政の減少」は、
霞ヶ関(官僚)の関与を強めている。
・地方が生き残るためには、交付金でなく税源移譲すべき
◆現状と合わない国土計画
・今の国土計画は人口増大、右肩上がりの時期に作られたもの。当時の予測と現状は違う
・2010年9月から新たな計画を作り始める
→ 多極分散の見直し(人口減少を見据えた効率化と集中)
都市政策の充実(今後急激に都市部が悪化する予測)
新たな公共(民間団体の一部行政化)
◆グローバル化
・既に、基礎自治体と海外は直結している
・観光・農業分野でデフレ輸入してしまったら、悪循環になる
◆政策思考の必要性
・政策を創造すれば国が受け止めてくれる時代
・議論と主張は違う
議論)根拠を示す → それを受け止め検証する = 建設的な新しいものを作っていく
主張)自分の考えを伝える行為
客観性)比較が出来ること。別の視点が見えてくる
◆政策
・政策とは理想と現実をつなげる手段の集まり。政策には理想が必要
・ニーズを無秩序に受け止める政策に反論は出ない。しかし失敗に結びつく。
・政治が担うべきは「政策」と「施策」の部分。「事務事業」ではない。
どう分配すべきかを議論することが大事。
◆その他
・考える(道筋を求める)と悩む(すぐに答を出す)の違い。考えることが重要。
・公共性=価値観の違うものが共通すること
・3%ルール:住民の3%が確固たる意志を持てば政治が変わる
・民主主義は与えられるものではない。常に作り続けていなければ劣化する。
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講義「北国発 議会改革」
北海道町村議会議長会事務局長 勢旗了三氏
◆北海道の現状
・1万人未満の自治体 113町村/144町村(全体の8割)
←→ 全国では5割
・道内は合併が進んでいない
・道内には議会改革の先進地がある(福島町、栗山町、白老町)
◆議会改革
・議会側もマニフェストの時代に入ったか。
・議会基本条例 = 議会の改革決意を示したものではないか。
・議会改革には議長のリーダーシップが重要。
・会議規則や委員会条例は会議のルールを決めただけのものに過ぎない。
・議員定数の上限値が撤廃された時、各自治体の議員定数の根拠を示さなければならない。
(現状では、上限値の○割り削減という形で定数が決められているから)
◆議員報酬
・戦前、地方議会議員は名誉職であった。
そこから転換する際、全国町村会等によって議員報酬の基準が示された。
市議会議員:市役所の局長・部長級と同程度
町村議員 :首長の30%程度
・現在は報酬審議会やそれぞれの自治体財政にあわせ柔軟に決められている。
全国町村議員の平均 約21万円 (首長の31.2%)
道内町村議員の平均 約17万5千円(首長の25.3%)
→ 報酬の低さが若手の立候補を阻害している。
◆通年議会のメリット(白老町議から)
・専決処分の抑止
・いつでも必要とされる所管事務調査を決議して取りかかることが出来る。
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宮脇先生の講義を受け、今まで曖昧にイメージしていたものが明確になりました。特に地域主権下における議会の役割や取り組むべきこと、将来像など。いずれにしても「理想」「理念」の重要性は政治学の先生方誰もが主張するところで、私も日頃感じるところです。
この後のワークショップにおいても、この宮脇先生の講義がベースになって思考する部分も多く、こうしたトップランナーの身近で学ぶことが出来る環境は、やはり北海道大学の公共政策大学院ならではのものでしょう。ますます魅力を感じました。
議会改革に関しては、参加者に白老町議の方がいたので直接質問することが出来、疑問が解決、納得できました。また2日目には議会改革をテーマに徹底討論を行ったのですが、鷹栖町や音更町の取り組みは非常に興味深く、ほとんど報道されていないところでも様々な工夫がなされていることを感じました。やはり直接お話を聞ける機会は重要です。それと、町村議会の先進性も再確認できました。このあたりはまた別の項で。
- by 宮下ゆみこ
- at 20:54
comments
ゆみこさま
更別村の菊地ルツです
HOPSサマースクール参加されたのですね
私も昨年からチェックしているのですが、2年連続で他の議員研修と重なって参加を断念しています・・・
ゆみこさんのHPでその内容と雰囲気を垣間見ることができて得した気分になりました
ありがとうございます
北海道らしくない残暑が続きます
公私ともにご多忙なゆみこさん、どうぞご自愛ください
又どこかの研修会場でお目にかかれることを楽しみにしています
では・・・
菊池ルツ様
コメントありがとうございます。
ルツさんもやはりチェックしてたんですね、HOPSサマースクール。今回の参加者の中に2人も、よく勉強会で顔を合わせる人がいて、同じ思考なんだなあと思いました。
私もこの時期に議員研修と会議が一つずつ入っていたけれど、欠席にしてもらったの。それが出来たのも、このサマースクールの案内が議会事務局を通して配布されたから。やはり、議会関係者に認知されないとなかなか参加できないよね。
HOPSの先生方も定員割れのことを気にされていたので、その辺の事情をお伝えしようと思います。内容が素晴らしいだけに、多くの議員に参加して欲しいと思うので。
私もこのブログを通じてHOPSサマースクールのPRが出来ればと思ってます。まだまだつづきがあるので、気合いを入れて書かなくちゃ!!!
楽しみにしてくれているルツさんの顔を想像しながら頑張ぞ。
では、またの機会を楽しみにしています。