2010年02月18日

地方議会議員セミナーVol.5「民主党連立政権下の地域主権政策」

2月17日、第一法規(株)主催、北海道町村議会議長会後援の地方議会議員セミナーに参加してきました。会場はホテルさっぽろ芸文館(旧北海道厚生年金会館)。全道各地から100人近い市町村議員が集まったことからも、今回のテーマや講師に対する関心の高さが伺えました。
ちなみに、月形町議会からは私と楠議員の参加です。

今回のテーマは「民主党連立政権下の地域主権政策 =民主党連立政権で地方分権はどう変わるか=」。講師の北海道大学公共政策大学院教授 宮脇淳氏は平成21年11月まで内閣府本府参与・地方分権推進委員会事務局長を務められていたので、本質の話が聞けるのではないかと期待も高まりました。

講演の内容は、2009年12月に発表された地域主権戦略の工程表(案)【原口プラン】を軸に、民主党政権における「地域主権」と旧自公政権時代の「地方分権」との相違点、鳩山内閣における課題の解説(消費税増税、子ども手当、行財政改革、地域主権)、鳩山内閣の現状と今後、などです。

宮脇先生のお話しは非常に熱がこもっていた上に、私の疑問点を丁寧で分かりやすい説明で晴らしてくれ、とても充実した2時間半でした。以前に宮脇先生のお話を聞いたことがありますが、その時よりずっと情熱的で明解だったように感じます(私の理解が深まったから?)

以下に私の印象に残った点を列挙します。
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

「民主党連立政権下の地域主権政策
   =民主党連立政権で地方分権はどう変わるか=」

        北海道大学公共政策大学院教授 宮脇 淳氏

《民主党連立政権下の地域主権政策》

◆現状では、地域政策の状況や将来像は見えにくい。
 例)地方分権改革委員会(計100回以上、全てネットで公開)
    → 地域主権戦略会議(公開は1回のみ)
◆地域主権推進一括法案
・今年3月、国会提出予定
・戦略会議の裏付け法:ただし内容には踏み込んでいない(枠組み法)
・国と地方の協議の場の法制化:地方とは何(誰)を指すのか?

《1.日本の中央集権型統治の形成》

◆中央集権型統治:明治以降に維持された仕組み。「標準化」と「階層化」により形成
・標準化:全国画一基準
・階層化:責任と権限を国が決め、それぞれの階層(都道府県・市町村)に配分

◆第一次地方分権改革
・機関委任事務、地方事務官制度等の廃止は、大きな成果だった
・各省庁が合意できる範囲で分権していった = 勧告したものは全て達成できた
  → 今残っているのは、難しい(合意できない)部分と効果の小さな部分でしかない
    例)新プランでの幼保一元化・・・都市部の一部分が対象でしかない
・団体自治、行政分権を重視した改革だった = 内部の構造改革が中心
  → 住民にとっては「何も変わっていない」という感覚

◆総合行政の構図
・分立:縦割り(各府省別、各局課別の関与等)
・融合:各階層が目的に会わせたそれぞれの仕事を担う(例)義務教育 ←→ 分離 
・現状は「総合」行政:分立と融合の投網状態 ←→ 「統合」行政:現場に対応できる状態

《2.鳩山内閣地域主権政策》

◆消費税・地方消費税増税問題
・地方財政を考えれば避けては通れない問題
・国から地方への補助金19兆円。うち社会保障関係13兆円、義務教育4兆円、公共事業2兆円。
  消費税を社会保障目的税化した場合、増税しても地方のサービスの自由度は増えない。
・消費税は法人税と同じくらい地域間格差がある → 調整方法の検討必須
・社会保障費用は既に国ベースでまとめていかなければ成り立たない状態。
  例)国民健康保険:基礎自治体が事業主体となり、国が補助する現行方式 → 国へ統合

◆行財政問題
・一括交付金問題 ○一括交付とは、交付基準(算定の仕方)を単純化すること。
         ○きめ細かに地域特性を見ていく=ヒモ付きに近い。今までと何ら変わらない
         ○どういう範囲で行うか、どこまで地域特性を勘案するのかが課題
・地方交付税問題 ●昨年来、財政的に厳しい状態の自治体が増えている(臨時財政対策債増)
          =今の交付税算定基準では義務的な業務が賄えない状況。
           交付税の仕組みが成り立たない状態 (基礎自治体では対応不可能)
         ●現状打破には「交付税を拡大」or「サービスを縮小」のどちらかしかない
         ●都市と地方の分配(水平配分)をどうするか
・公務員制度改革 ○民主党マニフェストでは「総人件費2割削減」となっているが、
          65歳へ定年引き上げするも給与法と連動していない

◆地域主権の意味
・言葉の概念が不明解。国民主権とはどう違う
・下からの民主主義 = 基礎自治体優先の法則
・住民参加の[メリット]問題発掘ができる ←→[デメリット]問題解決ができなくなる
・住民参加で決定したことを、納得のいく説明によって否決できる議会が最も力がある

◆シビルミニマムと経済成長戦略
・シビルミニマム(市民から見た最低基準)とナショナルミニマム(国の視点で決定した統一基準)
・地域が地域のエゴにとらわれず、国全体的な発言をすることで初めて力を認められる(地域主権)
・1970年代美濃部都政・・・地方首長が国政を動かした唯一の時期

◆議論の課題
・発言力の大きさ、以前は「町村会」だった(合併で数を減らし力を落とす)
 →「市会」になり(合併で数を増やし力を増したが、人口規模に開きがありまとまらない)
  →今は「知事会」が中心(国は、地方=知事会と考えている) 
・知事会は住民から遠いのではないか?

《3.鳩山内閣の政策》

◆鳩山内閣の政策特性
・政策重点を供給側(業界)から需要側(個人)へ転換
 → ○所得を生み出す政策がおろそかになる
   ○景気対策としては時間がかかる(供給側への配分は即効性あり)
   ○基礎自治体の事務が増える
・正義感を支える価値観の不明確化
   ●(自公政策の否定でなく)新しい姿を示す = 不明確な部分を早く明らかに
   ●例)子ども手当:当初の理念(社会で子どもを育てる)なら、制限なしに全員へ。
       給食費との相殺、税の滞納との相殺・・・理念から離れていく → 信用をなくす

◆鳩山内閣の現状
・「混沌」状態
・「新しい秩序を作る」ことができるか、「混乱を招く」かは夏の参議院選挙の結果次第

◆今後の政局動向
・全ては参院選後。
・来年の統一地方選で「国と地方の体制変化」。その後、アジアやアメリカでも体制変化の時期。
・今の地方主権構想は総務省と知事会中心(体系的)←→ 地方の声(多極分散型の発言)の重要性
・混沌とした今、地方が声を上げると意外と通ることがある。→ 議会が声を上げる。議論をする。
・市町村は自治体として、横の連携による発信がない(プロジェクト単位のみ)。
 政策に乗せるには、他の自治体が興味を持てるよう、広い観点で発信していく。
__。__。__。__。__。__。__。__。__。

やはり話しの肝は、基礎自治体として「何がしたいのか」「どうあるべきなのか」を明確にすることと、覚悟を持って決定し、実行していくこと。それらを、議会や首長が住民と共に納得しながら進めることができたら、地域主権に繋がっていくということなのだと思う。

「地方自治」「地域主権」をめざして活動する、先生・首長・議員の言葉や手法は違っても、向かうところは同じだと肌で感じた。だからこそ、私も月形という特性を活かした自治の姿を実現すべく、自ら考え、選択していかなければ・・・。誰も教えてくれないし、頼ることもできない。自ら到達しなければならない。それが積極的自由。

comments

コメント・フォーム

(ゆみこの日記 にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)

コメント・フォーム

▲TOPへ戻る