2009年11月26日

廃棄物資源循環学会 平成21年度技術セミナー「(株)アレフ」

廃棄物資源循環学会セミナー、最後の報告は(株)アレフの取り組みです。

(株)アレフは、ハンバーグレストラン「びっくりドンキー」を全国展開(全国に約300店舗+セントラルキッチン7カ所)するフランチャイズチェーン本部で、食と農の振興を目指し、積極的に環境取り組みを行っています。平成19年度以降、環境や省エネ、新エネに関する様々な表彰を受けています。
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セミナー『地域融和型バイオマス利活用システム(企業における取り組み)
      〜(株)アレフにおける廃棄物系バイオマス利活用〜』
       (株)アレフ 恵庭エコプロジェクト エコチームリーダー 佐々木隆浩 氏
    『バイオ燃料供給ビジネスの課題と展望』
       合同会社バイオガス・ネット・ジャパン 代表企業 兼松(株)黒田秀一 氏

現地見学『アレフ北海道工場(恵庭市)』
    『提携牧場(千歳市・細澤牧場)のバイオガスプラント』


[(株)アレフの取り組み]
◆エコプロジェクトの3つの柱:生ゴミの堆肥化、バイオガス、ナタネプロジェクト(含BDF)
◆生ゴミの堆肥化:全国120店舗で実施
 ・1店舗平均 50kg/日発生 → 各店舗に設置された生ゴミ処理機で乾燥(50℃、2ヶ月間)
                  ↓
                 収集 → 2次発酵 → 堆肥として利用(提携農家・販売)
◆生ゴミのバイオガス(メタンガス)化:2系統
◎北海道工場(セントラルキッチン)の食品残渣
  ・生ゴミ 500kg/日
    ↓
   提携牧場で畜産廃棄物と共に発酵(37℃)
   (発生量の1/3は発酵槽の加温に使用)
    ↓      
   メタンガスの精製(脱硫、脱CO2、脱水:60%→95%)
    ↓
   高圧ボンベに充填・2日に1回配送
    ↓
   北海道工場で燃料として使用
   (バイオガスボイラー=天然ガス用)

  ・消化液は提携牧場の牧草地へ(1トン/10a散布 Nとして2〜3kg)
  ・ガス充填装置が高額(安価な海外産は国内の規格に合わない)
  ・ガスに関する規制(取扱量、責任者の配置など)が多く、普及の障害になっている
  ・低圧ボンベがあれば輸送量を増やし、採算ラインを下げることができる(現在開発中) 

 ◎ビール粕:恵庭市えこりん村にバイオガスプラントを設置

◆廃食油のリサイクル(BDFの製造と使用)
 ・いしかりエコ燃料プロジェクト(行政:全8市町村+企業+市民団体)の一環
 ・家庭から出た廃食油を店舗まで持ってきてもらう方式(回収量18,000L/年)+各店舗分
  一般廃棄物取り扱いの資格がないために、有価物として取引(粗品と交換)
 ・北海道工場内にBDF製造プラント
   夏:食材運搬車、ゴミパッカー車、えこりん村(バス・コンバイン・トラクター等)で使用
   冬:廃食油のまま、えこりん村の暖房用に(BDFは低温で粘度が高くなるため)
 ・廃食油 → BDF(9割)+グリセリン(1割)
 ・グリセリンはバイオガスプラントへ、または燃料として売却。グリセリンボイラーも開発中

◆北海道工場での複合的な取り組み
 ・ボイラー燃料としてバイオガス、木質ペレットの利用
 ・地中熱・設備廃熱の徹底利用(熱回収、ヒートポンプ)
 ・ソーラーパネル(太陽光発電)
 ・ソーラーウォール(太陽熱暖房)
 ・植物浄化システム、雨水利用

[バイオガスビジネス]※(株)アレフは、(株)オリエントジオサービス(100%子会社)を通じて合同会社バイオガス・ネット・ジャパンに参加
◆バイオガスビジネスは夜明け前(あと2〜4年で夜が明けるのでは・・・)
◆メタン発酵で生成されるバイオガスは、メタン濃度60%+硫化水素(6,000kcal)
                   精製して 9,000〜9,500kcal
               (参考)プロパンガス 11,000kcal
◆ヨーロッパの精製技術は第2、第3段階に入っていて、イニシャルコストも下がっている
◆例)・高効率減燃処理(焼却炉の前にバイオガスプラント)
   ・下水汚泥と生ゴミなどの複合処理(長岡市)
   ・下水道のバイオガス利用(金沢市:都市ガス原料、神戸市:自動車用燃料)
   ・高圧水吸収法(メタンガス精製方法)
◆FRP(強化プラスチック製)高圧容器は鋼製ボンベに比べ重量1/3。輸送効率upできるが高価
◆普及のためには制度的バックアップ必要
 ・大規模な下水処理場必要
 ・混合発酵(下水、一般廃棄物、農業系産廃)を可能にしなければ(縦割りの解消)
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(株)アレフの取り組みは複合的で素晴らしかったです。特に北海道工場は環境モデルの見本市のように様々な技術を見ることができ、また技術的なお話を伺うこともできました。ありがとうございました。
廃棄物資源を循環する場合、より効率的に行うには「複合的」がキーワードになるようです。規模は小さくとも循環システムは多様にし、少しずつの効果を組み合わせることで成果を生んでいるのを実感しました。
これは今までの「工業的」「大規模」から「農業的」「零細」へと、発想の転換が必要なのではないでしょうか。今までの感覚で廃棄物循環を考えると失敗するかもしれません。

自治体は多くの場合、地域の廃棄物処理を担っています。今はまだ「広域化」が叫ばれ、工業的な効率化を目指していますが、北海道の特徴(自然条件、人口分布、産業構造)を考えた場合、はたして今進めている方向が正しいのか・・・?

バイオマスに関する循環システムは途上段階ですのでハッキリしたことは言えませんが、私は小規模で複合的な循環が最も効率的ではないかと考えます。今後の月形町の「廃棄物問題」に関しても、この視点を頭に置いて取り組んでいきたいと思います。

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