2009年08月23日

地方自治土曜講座「議会は変わるか? ー議会改革の諸問題ー」その1

昨日、北海学園大で開催された北海道地方自治土曜講座に参加してきました。

今回は発表者としての参加だったので最前列に用意された特別席。テーマが身近なもの(普段から問題意識を持って取り組んでいること)だったので、月形町議会の置かれている状況と比較しながら様々にイメージを膨らませ、議会改革の方向性とヒントを見つけることができました。

自分の発表では「田舎の町村議会の置かれている状況」をお伝えしたかったのですが、どの程度できたか・・・。準備はできていたつもりでしたが、もっと簡潔に本質を伝える技術を身につける必要性を感じました。それでも会場との質疑応答では冷静に対応できたのではないかと思っています。

会場には定員(100名)いっぱいの参加者があり、普段の講座以上に議員の参加が多かったとのことです。議員にとって議会改革は、当事者として取り組むべき大きな課題だと言うことでしょう。参加者の中に顔見知りの議員さんが何人もいて嬉しく思いました。今回の講座でどんな感想を持ったのか・・・機会があれば伺いたいと思います。

さて、当日のプログラムは以下の通りです。私の印象に残った内容をあわせて記します。
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2009年度 北海道地方自治土曜講座 第3回「議会は変わるか? ー議会改革の諸問題ー」


◎講演「議会をめぐる近時の法改正と地制調での議論の方向性」
              北海学園大学法学部教授 大西 有二氏

◆行政改革「3つの分権」のうち、「地方への分権」「市場への分権(規制緩和)」は既に進行しているが、最後の「政治への分権(政治の復権)」が地方の場でも求められている。
◆行政が「社会的ネットワーク(=NPO等の民間組織)」を活用する時代。公私協働の流れは続く
◆首長をコントロールするには、実は議会や議員側にも相当の専門能力が必要だ
◆議員になるチャンネル(=議員をリクルートする方法、様々な利害を議会に反映させる方法)の多様化が必要
◆地制調答申や様々な法改正で、議会の制度改革は進んでいる。議会の組織および運営については、議会の自主性・自立性にゆだねられている。
◆選挙制度に関連し、政党化は「政治における中央集権」を進めるのではないか。地方議会政治の政党化を指示しない場合には、議員になるチャンネルの多様化を図る。
◆首長=一般的利益代表、議員=個別的利益代表
◆地方分権に伴い、地方自治体の権限も増大している。首長部局は、より多くの仕事をより少ない職員と予算で処理するという困難な課題に直面している。これを踏まえ、議会もまたこうした時代の要請に応えうる自治組織体制の確立に取り組むべき。



◎講演「議会基本条例の制定など、近時の議会改革の諸相」
          北海学園大学法学部教授 福士 明氏

◆議会改革 → 議会基本条例に行き着く
◆今まで議員は「自分は住民の代表であるから、住民の意見を聞く必要がない」と思っていた(今も思っている)。しかし議員・議会においても住民自治・住民参加の考えは必要になってきている。
◆議会の役割・機能として何を重視するかによって、議会運営の構想はかなり違ってくる。
 「議会=政策形成機関」:議会が立法権を行使して政策立案をしていくべき。
             専門職としての議員像。常勤職化。議会事務局の強化。
 「議会=コントロール機関」:首長の政策決定・実施を関し統制するところに議会の重点を置く。
             素人としての議員像。
             夜間議会・休日議会の開催、兼職禁止の撤廃、報酬の低けん化。
◆「協働型議会」:監視機能・政策立案機能を有する「監視型議会」と、
         それを住民参加で行う「アクティブ議会」の両方の役割を担う議会
    ↓
 議会は、野党的機能=監視機能と同時に、地区や業界などの地域的個別的要望を踏まえつつも全体的長期的視点での「地域デザイン(ビジョン)構想者」の役割を担わなければならない。
 また議会自身も住民参加を取り入れ、議会が「公開の場」で住民の提案あるいはオルタナティブ(既存のものと取って代わる新しいもの。代替案)を「協議=熟議」によって調整し最終決定するという役割を担わなければならない。
◆首長提案の中で明らかにされるべきもの(議員が追求すべき観点)
:政策等の発生源、検討した代替案、他の自治体の政策、総合計画の根拠または位置づけ、
 関係する法令および条例等、財源、将来コストの計算
◆議会基本条例は、議会改革のツール(道具)である


         
◎講演「NPO活動と議会」
         北海学園大学法学部教授 樽見 弘紀氏

◆日本の議会では、根回しすることが議員仕事としてまかり通ってきた
◆市民ニーズはロングテールの時代。議会を頼らず市民が意思表示、活動する時代。
◆足による投票:住民が、満足のいく公共サービスを求めて住居を変える。
 → 住民ニーズを的確に捉えられない(提供できない)自治体は人口が減少する。
◆自治体はNPOと同じ構造、同じ組織ではないのか。
◆参考図書:岡部一明著『市民団体としての自治体』お茶の水書房(2009年7月)



◎報告「政務調査費など」
     NPO法人リンカーンフォーラム北海道代表理事 山下 浩氏

◆札幌市議会の政務調査費使途についての詳細報告
 (リンカーンフォーラム北海道HP・市民監査報告書に掲載)
◆政務調査費は政策立案のためにあるもの。議員広報は本来の目的から外れるのでは。
◆議員とは自己犠牲のもと、住民の利益を守るものではないか



◎報告「議員諸氏による現状報告」
     北海道議会 原田  裕氏
     江別市議会 林 かづき氏
     月形町議会 宮下 裕美子
     登別市議会 松山 哲男氏
     白老町議会 大渕 紀夫氏

◆各議員10分で、各議会の現状と取り組み、問題点などを報告
・原田氏からは、北海道議会基本条例の制定経過と内容の報告
・林氏からは、江別市議会での林氏の議会改革に関する取り組みとその経過報告
・宮下からは、月形町議会の現状報告とこれからの改革の方向性について
・松山氏からは、登別市議会の「議会フォーラム」「議会基本条例制定」の報告
・大渕氏からは、白老町議会の「通年議会」の経過と広報公聴常任委員会についての報告



◎質疑・会場討議 司会:大西有二氏(地方自治土曜講座実行委員)

Q 樽見先生の「足による投票」について、
  日本のような比較的均一な公共サービスの状況ではありえないのでは?
Q リンカーンフォーラム北海道・山下氏は「議員は自己犠牲・・・」と言っていたが、
  現職議員は「住民と議員の関係」をどのように捉えているのか?
Q 各議員とも、自分の議員報酬額をどのように捉えているのか?
Q 各議員にとって政務調査費の効用と、その成果として政策にどのように反映させているのか?
Q 議員がどのような仕事をしているのか示す必要(広報の充実)があるのではないか?
Q 道議会における一般質問の事前するあわせについて
Q 道議会における政務調査費の使途について

comments

ゆみこ様

初めまして。わたし、議会改革に取り組みたいと議員提案しても、議会全員が議会改革特別委員会設置に反対し、前に進めず困っています。
やはり議会改革は少なくても議会全体の三分の一ぐらいの賛同者がいないと着手する事すら出来ませんね。理由は、「忙しくなるから仕事を作られたくない」から。情けないことです。

でも、私も栗山町議会にあこがれて本市の議会基本条例を北海道自治体学会の要綱試案や栗山町、伊勢市の条例などに倣い作成してみたが、思うのは、北海道の議員さんはうらやましいということ。それは、記事にあるように、ニセコ町の元町長の逢坂さんみたいに北海道地方自治土曜講座に勉強に行けるからです。四国にそんな議員の学びの場はありません。ホントに恵まれてますね。本当にうらやましいです。

”あおぞら”さん、コメントありがとうございます。

今回参加した市議さんの中から
「自分の議会でも議会改革をしたいと思い議運にかけたが、『全会一致でなければ協議は進められない』と言われ、全く着手することができない。ほかの議会はどのように進めているのか?」
と言う質問が(非公式の場で)出ました。

議会改革の進んでいる白老町の大渕町議、登別市の松山市議から
「こういうことは全会一致でないと進められないでしょう。全会一致でやっています。」
と言う回答がありました。

私の所属する月形町議会の場合、議会改革に関することは全員協議会にはかられ、その都度全員に了解を得て進められています(つまり全会一致)。反論が出たり、対案が出たりすることもありますが、最終的には
「まずはやってみよう。ダメならダメで修正すればいいんだから。」
という声がかかり、前に進んでいきます。
会議規則の改正や、議会基本条例制定など大ナタを振るうことはありませんが、現行の制度内の解釈で対応できるものは、かなり柔軟に対応していると思います。

これらの話を聞いていたある先生から
「町村議会は議会改革にしても、かなり進んでいる。人数が少ないこともあってまとまりやすく、改革もしやすい。規模が大きくなるほど難しくなって、都道府県レベルでは・・・。市議会でも改革の進んでいるところはやはり議長さんの力が大きいのではないか。」
というお話がありました。

”あおぞら”さんのように感じている議員さんはきっと全国に大勢いることでしょう。

私は何事も比較的思い通りに進めさせてもらっているので、どうしたらいいのか・・・。
私が突拍子もないことを発言しても「新人のうちは何を言ってもいい」「そう信じて言うんなら、やってみればいい」と半分突き放しながらも見守ってくれる先輩議員のお陰で、閉塞感を感じずに前向きにやれているんだと思います。

勉強の機会の件ですが、私も北海道は恵まれていると思います。土曜講座や北海道自治体学会など一般市民が気軽に参加できる場がありますし、北大の公共政策大学院や北海学園大には地方自治関係の先生方が揃っていて、単発のセミナーやシンポジウムなども数多く開催されています。

しかしながら、これらの企画・運営に携わっているのは極少数の先生方や自治体職員です。中心になる方々がそれぞれの組織を掛け持ちしながら支えてくれています。そういう献身的な行動によって影響を受けた人達がそれぞれの場でまた活動して輪が広がって・・・。私もその輪の一つになれたらと思って、自分の場で、自分のできること(自分にしかできないこと)をやっているつもりです。

最初の核になるのは大変ですが、でも誰かが核にならなければ物事始まらないかもしれません。北海道の場合、そういう先輩がいたお陰で今があると思います。


”あおぞら”さんのブログを拝見しました。自分の考えや行動を、歯に衣着せぬ文章でつづられていて素晴らしいと思いますし、私も共感するところが多いです。こういう地道な活動で変化は起きないのでしょうか? 

私は自分の議会で孤独を感じることもありますが、ブログで知り合った全国の人からのコメントや声かけで何度励まさせたことか・・・。前に進む原動力をもらっています。

  • 宮下ゆみこ
  • 2009年08月24日 05:50

  •     

ゆみこ様、大変丁寧なご返事、ありがとうございました。

四国全体が沈んでいっている感は否めません。それとは反対に、北海道には夕張市に代表されるように財政的に厳しい市町村があるのに、一方ではニセコ町や栗山町のように先進的なまちがあるのはなぜだとお考えですか。私にはそれが不思議に思います。

17年に夕張市は歌志内市と赤平市と共に全国の市人口減少ワースト1位で、五年間に12.1%の減少率でしたが、室戸市は10.2%で2位と、輝かしくもない成績でした。方や北海道の三市は衰退した産炭産業の町で、此方、高知県の衰退した遠洋マグロ漁業の町です。これらの状況も似通っています。

でも、四国の議会政治で先進的な市町村というのは聞いた事がないし、大学もたくさんありますが地方自治の活性化に取り組んでいる大学なんて聞いた事がありません。

だから、北海道になぜ先進的な市町村があるのかや、議員や行政職員の学びの場がなぜ北海道にいくつもあるのかなど、解かればまたお教え下さい。

  • あおぞら
  • 2009年08月24日 20:26

  •     

あおぞら様

お返事が大変遅くなり申し訳ありません。

>北海道になぜ先進的な市町村があるのか、
>議員や行政職員の学びの場がなぜ北海道にいくつもあるのか?

私も疑問に思い、長年道内の地方自治畑で仕事をされてきた先生にお伺いしました。
「北海道の地方自治が発展したのは、木佐茂男、森啓、山口二郎、そして神原勝の4人が同じ時に揃ったからだと思うよ。この4人の功績は大きい。」
「栗山町の場合は、橋場議長、中尾事務局長、そして神原先生の3者が揃ったことが大きいね。」

確かに、私が地方自治に興味を持ち今こうして議員として活動しているのは、ここに名前の挙がった方々の影響が多分にあります。書物で知るだけでなく、直接お会いして話ができる「場」を作ってくださっているのも大きいです。

それに加え、私は「文化」が深く関係しているのではないかと思っています。

栗山町の橋場議長が初めて議長になったのは、議員2期目でした。ニセコ町で逢坂町長が誕生した時、逢坂さんは35歳、役場の係長職です。どちらも(慣習からすれば)異例だと思いませんか? 
それに(私事で恐縮ですが)、道内でも最も早い時期に拓かれ「歴史がある」「閉鎖的」と自負するこの土地(月形町)で、新規就農者・女性・40歳という私を町議として当選させた町民の感覚をどう思いますか?

北海道は明治以降の歴史しかありませんし、全国各地から希望を胸に集まった人達で拓かれた土地です。それがこういった文化を育てているのではないかと、私は思っています。
私は北関東で育ちました。保守的な地域で、年長者やしきたりが優先される土地柄だったのだと、今北海道に住むようになって改めて感じています。


しかしながら、一方では夕張や赤平など旧産炭地問題も抱えているのが北海道です。旧産炭地に限らず、道内の自治体は自主財源に乏しく、月形町の財政力指数は0.18でしかありません。その上、土地は広く雪も多い、経常経費もかさみます。国頼みであり、国の意向に左右されるところもあります。

結局のところ、「バランスがとれていたのか」「機会を捉えたのか」「行動したのか」というところが分かれ目だったのかもしれないと、最近思っています。
そこには議会や行政を含め、町民の意識・行動が大きく関わっていると思います。

  • 宮下ゆみこ
  • 2009年08月29日 00:58

  •     

ゆみこ様、

よく解かりました。大事なのは、いかに行政が財政難で苦しくても、組織の中に先進的な意識と高い能力を持った積極的な職員がいるかいないか、そして、議会においてもその中に先進的な意識と高い能力を持ち積極的な改革派の議員が何人いるかでしょうね。

職員にしても議員にしても、危機意識も無く、「まー、いいか」で済ませてしまう人が多いが、そんな人の割合がどのくらいあるかです。

「不正は許さないぞ!」、「違法な事務事業は許さないぞ!」と厳格な頑固な議員がいないと不正、不適正、不公平が議会を素通りしてしまいます。(一人二人でも同じですが) 議員の資質は、そこであきらめるかどこまでも突き進むかでわかります。

  • 2009年08月29日 12:26

  •     

匿名様(お名前がなかったので、今回はこう呼ばせてください。)

>組織の中に先進的な意識と高い能力を持った積極的な職員がいるかいないか
>議会においてもその中に先進的な意識と高い能力を持ち積極的な改革派の議員が何人いるか

確かにそうだとは思いますが、上記のような職員や議員はどの組織にも必ず存在するのではないでしょうか。多くの場合はごくわずか、2割くらいになるのでしょうか。
その少数の改革派を住民が支持するかしないかで、その自治体の行く末が決まるのではないかと私は思っています。

自分が議員となって、内部から議会を見た時「議会って、町の縮図だ!」と思いました。
議会を構成している議員は、それぞれのバックに支持する住民がいて、その人の話を聞いているんです。例えそれが時代に合わない内容であっても、支持者はそれを信じて、それに夢を預けて、その目線で町を見ています。だからそういう議員がいるということは、そういう住民が住んでいると言うことなんだと思います。

現状打破したいのであれば、目の前の議員の意識を変えることも大事ですが、それ以上に住民の意識を変えなければなりません。そのためには「情報公開」が必要だと思うのです。

議会で何が話し合われ、どういう結論に至ったのか、その間にそれぞれの議員はどんな意見を持って取り組んだのか・・等々。今までは結果だけを公開して満足していた議会も、経過も含め、全てを公開することで住民が本質を見極められるようになると思うんです。
もし住民が「改革せねば!」と気づけば、住民から支持を得た改革派が議会の多くを占めるようになり、「住民主権」の議会改革ができるのではないでしょうか。

半分理想論ですが、あながち夢物語でもないと思いませんか?
住民が変われば議会も変わる。そのために、今、少数派の改革派議員が取り組むべきは「情報公開」「議会への住民参加」なのだと思います。

  • 宮下ゆみこ
  • 2009年08月29日 23:26

  •     

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